「全粒粉」の小麦粉はどんな特徴があるのか、なぜ少し茶色いのか、ブランって何なのか

小麦の豆知識

小麦粉にはよく見かける真っ白なもののほかに、少し茶色がかった全粒粉があります。 小麦粉の全粒粉とは、小麦の食べられる部分を丸ごと粉にしたもので、白い小麦粉より栄養が多く含まれています(*1)。お米にとっての玄米が、小麦粉の全粒粉になります。
健康や栄養への関心が高まるなかで、全粒粉に注目が集まっています。全粒粉のよさや、どのように使われているのか解説します。 また、全粒粉のよさを知ると「そうであるならば、なぜ白い小麦粉が主流になっているのか」という疑問が湧くと思いますので、それにも答えていきます。

「全粒粉」の小麦粉はどんな特徴があるのか、なぜ少し茶色いのか、ブランって何なのか

全粒粉の小麦粉は、お米の玄米のようなもので「全部使う」

農林水産省は小麦粉の全粒粉のことを、「小麦を丸ごと粉にしたのもの」と説明しています(*1)。
全粒粉の特徴は次のとおりです。

(*1)農林水産省 小麦粉の全粒粉とはどのようなものですか。

小麦粉の全粒粉の特徴

農林水産省は黒と表現していますが、市販されている全粒粉は茶色っぽいものが多い傾向にあります。
玄米は精米する前のお米のことなのですが、全粒粉はこれと似ています。ちなみに玄米も、普通の白米より栄養が多く含まれています(*2)。

なお表皮のことを「小麦ブラン」や「小麦ふすま」と呼ぶことがあります。

(*2)農林水産省 子どもの食育

全粒粉はどんなメリットがあるのか

全粒粉はどんなメリットがあるのか

全粒粉を料理に使ったり食べたりするメリットは、栄養を豊富に摂れることです。
ではなぜ全粒粉は白い小麦粉より栄養が豊富なのでしょうか。

胚乳だけでなく表皮と胚芽も含まれているから

小麦はイネ科の植物で、世の中の食用作物のなかで最も多くつくられています。そして、小麦をそのまま食べたり調理したりすることはまれで、大体は加工して粉状にして小麦粉にしてから使います(*3)。
小麦のうち食べるのは実の部分で、胚乳と表皮と胚芽の3つのパーツで構成されています。
この3つの量は、胚乳83%、表皮15%、胚芽2%(計100%)という割合になっています(*4、5)。大部分は胚乳です。

白い小麦粉は、表皮と胚芽を取り除いて胚乳だけでつくります。
一方、全粒粉は、表皮も胚芽も含めて小麦を潰してつくります。全粒粉が「よい」とされているのは、小麦の食べられる部分をすべて食べて、すべての栄養を体に取り込むことができるからです。

(*3)コトバンク
(*4)日清製粉グループ 全粒粉・小麦ブラン(小麦ふすま)とは
(*5)桜井食品株式会社 小麦について

胚乳と表皮と胚芽はこんなに違う

胚乳と表皮と胚芽は、含まれる栄養素がかなり違います。以下のようになっています。

小麦の3つのパーツの栄養素

胚乳(全体の83%を占める)
大半は糖質とタンパク質
表皮(全体の15%を占める)
食物繊維、タンパク質、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム
胚芽(全体の2%を占める)
脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミンB、ビタミンE

このように、小麦の本体部分ともいえる胚乳には、ほぼ糖質とタンパク質しか入っていません。
そして健康づくりに欠かせない食物繊維やミネラルやビタミンなどは、白い小麦粉をつくる過程で捨てられてしまう表皮と胚芽に含まれています。

食物繊維の割合が断トツで多い

小麦は実は、食物繊維を摂るのに最も効率がよい食物の1つです。食物繊維が多いとされている食物のなかでも、小麦の表皮に含まれる食物繊維の割合は断トツに多いとされています。

100gに含まれる食物繊維の量

この数字をみると「食物繊維を効率的に摂るなら小麦の表皮に限る」と思えてしまいます。

多くの食べ物や栄養は小腸で消化、吸収されますが、食物繊維は消化、吸収されることなく大腸に届きます。
そして食物繊維は、1)便秘の予防、2)整腸効果、3)血糖値上昇の抑制、4)コレステロール値上昇の抑制など、多くの健康効果を持っています。
食物繊維は、厚生労働省が1日3、4gは摂ったほうがよいと推奨するほどの健康成分で、全粒粉でつくったパンを食べることもすすめられています(*6)。

(*6)e-ヘルスネット(厚生労働省) 食物繊維の必要性と健康

全粒粉はどのように使われているのか

全粒粉はどのように使われているのか

小麦粉の全粒粉は、食のプロたちも注目しています。全粒粉のパンや全粒粉のパスタなどは健康食品というポジションを確立しているといえるでしょう。
その他、ホットケーキミックス、うどん、ビスケット、お菓子、カレー粉、シリアルなどに全粒粉入りのものがあります。

最近ではスーパーなどでも全粒粉の小麦粉が売られているので、家庭で簡単に使うことができます。
家庭でお好み焼きやたこ焼きをつくるときに全粒粉を使えば、家族全員で栄養を摂ることができます。ホームベーカリーを持っている家庭なら、自宅で全粒粉入りパンをつくることができます。

白い小麦粉が主流になっていることについて

ここまで全粒粉について紹介してきましたが、最後におまけで、なぜ全粒粉ではなく、白い小麦粉が日本では主流になっているかについてお話します。

小麦を白い小麦粉にするには、小麦から表皮と胚芽を取り除かなければならず、しかも小麦の表皮は6層にもなっていて強靭(きょうじん)で取るのに手間がかかります。
さらにいえば、表皮と胚芽を取り除くということは小麦の食べられる部分の17%(表皮15%+胚芽2%)を捨てることになるので、小麦から取れる小麦粉の量が減り、白い小麦粉の方が取れ高が少なくなります。

それでも、白い小麦粉が主流になっている理由としては、主に以下の2つです。
●癖がなくて白くてきれいと感じる人が多いから
●加工食品をつくりやすいから

白い小麦粉のメリットは、全粒粉のデメリットでもあります。

白い小麦粉は癖がなく白くてきれいと感じる人が多いから

白い小麦粉でつくった食パンなどを食べ慣れている人が、たまに全粒粉でつくったパンを食べると「香ばしくて歯ごたえがあっておいしい」と感じると思います。
しかし、香ばしさは癖が強い味とみなされることがありますし、歯ごたえは食べにくいと感じられることがあります。

また、白い小麦粉を使えば、パンが焼きあがったときにきれいな白い中身になりますが、全粒粉でつくるとどうしても黒みがかってしまいます。白い小麦粉の白さや美しさは、キレイな料理をつくりたい料理人や家庭の人にとって魅力的に感じやすいことがあります。

白い小麦粉は加工食品をつくりやすいから

小麦粉にはグルテンという粘り気を生む成分があり、これがパンなどの食品の弾性の元になっていますが、全粒粉になるとグルテンの割合が減ってしまいます。
ふっくらモチモチのパンをつくりたい場合、全粒粉は向いていないかもしれません。

まとめ~意識して摂るようにしてみては

まとめ~意識して摂るようにしてみては

白い小麦粉がメジャーで、全粒粉がマイナーになってしまうのは、ある意味仕方がないことといえるかもしれません。おいしくてキレイな食品は人気が出て、白い小麦粉がその人気を支えているところがあります。
しかし全粒粉が持つ栄養はとても魅力的です。そして白い小麦粉を食べ慣れていると、全粒粉でつくった食品を食べると新たな味に感じられて食事が楽しくなるはずです。
意識して全粒粉を摂るようにしてみてもよいのではないでしょうか。