家庭で冷凍するのに適したパン、適さないパン

パンの保存方法

近ごろ、冷凍パンを目にする機会が増えています。かつては冷凍するとおいしくなくなるというイメージもありましたが、近ごろの冷凍パンのなかには、家でも簡単に、焼きたてのおいしさが楽しめる本格的なクオリティのものもあります。

しかし今回ご紹介するのは、市販されている冷凍パンの楽しみ方ではありません。
常温で食べることを前提につくられたパンのなかに、冷凍保存してもおいしく食べられるパンと、冷凍保存に不向きなパンがあります。

パン生活を充実させたい方に向けて、家庭用の冷凍庫で冷凍してOKのパンと冷凍にはあまり適さないパンを紹介します。

食パンは凍らせてよいパンの代表選手

家庭で冷凍するのに適したパン、適さないパン

日常的に食べられる食パンは、凍らせてもよいパンの代表格といってもいいでしょう。
これは食パンに限らず、すべてのパンについていえることですが、家庭用の冷凍庫で凍らせるとどうしても風味が落ちてしまいます。しかし、食パンは家庭用の冷蔵庫で凍らせても風味がそれほど落ちないパンの1つです。

デンプンが主成分のパンは冷蔵より冷凍のほうがおいしさキープ

食パンは、冷蔵ではなく冷凍させたほうがよいでしょう。
なぜなら食パンを冷蔵すると、硬くなってしまうからです。これはパンに多く含まれるデンプンが影響しています。デンプンは冷蔵の温度帯では水分が抜けやすくなり、硬くなる性質があります。
一方、冷凍の温度帯では、デンプンの劣化が進みにくくなります。

「とりあえず冷蔵庫に入れておこう」と思わず「食パンを保存するなら冷凍」と覚えておいてください。

バゲット(いわゆるフランスパン)も冷凍しても大丈夫

バゲット(いわゆるフランスパン)も冷凍しても大丈夫

フランスパンの愛称で知られるバゲットも、冷凍に適しているパンです。
食べる分だけ常温で残して、食べきれない分は少しでも早く冷凍保存してください。早めに冷凍するのがおいしさを保つコツです。

バゲットを常温保存できるのは2日程度ですが、パンのなかでもおいしさが損なわれるのが早いので、少しでも早く食べていただきたいパンの一つです。
そしてバゲットも冷蔵だと劣化が進んでしまいます。冷蔵はすべてのパンにNGと覚えておいて大丈夫です。

アツアツを買うのが理想だが、冷ましてから凍らせて

最初からストック目的で買うのも「あり」といえるくらい、バゲットは冷凍保存に向いています。
ただ注意したいのは、冷凍方法と解凍方法です。

バゲットでも、焼きたてに近いタイミングで冷凍するほど解凍後においしく食べられます。
ただ冷凍するときは十分熱を冷ましてからにしてください。

焼きたてホカホカのバゲットをそのままラップに包んで冷凍してしまうと、ラップにパンから出た水蒸気が付着して、それが凍る前にバゲットのなかに染み込んでしまい解凍したときにフニャフニャになってしまいます。

自然解凍するなら以下の方法がよいでしょう。

室温で1時間くらい解凍し、そのままでも食べられるくらいの柔らかさを取り戻したらオーブントースターで2、3分焼きます。
焼く前にバゲットの表面に、水を吹きつけてください。
霧吹きがあれば1、2吹きする程度で大丈夫です。霧吹きがなければ、洗った手を水道水で濡らして、パッパッとかけてもよいでしょう。

この方法は手間がかかりますが、確実においしく食べられます。
なお、電子レンジで温めるとバゲット独特のパリパリ感が失われてしまいますので避けたほうがよいでしょう。

クロワッサンも冷凍・解凍OK

クロワッサンも冷凍可能なパンの1つです。
そして冷凍したクロワッサンの品質は、驚くほど冷凍前と変わりありません。
冷凍したクロワッサンの解凍方法はとても簡単で、冷凍したままオーブントースターに入れて5分くらい焼けばおいしく食べることができます。
15分くらい自然解凍させてからオーブントースターで軽く焼いてもOKです。

バターの効果で焼くといい香りが復活

クロワッサンが冷凍に適しているのはバターをたくさん使っているからです。クロワッサンは最もバターを使うパンの一つです。
解凍するときにオーブントースターで焼くと、バターが溶けてから少し焦げるので、香ばしさが復活します。それで「まさにクロワッサンだ」と感じることができて、冷凍クロワッサンをおいしく感じるわけです。

酸化に注意、長期の冷凍は不向き

ただし、バターをたくさん使っているという理由で、クロワッサンは長期の冷凍には不向きです。クロワッサンの冷凍は短期にとどめましょう。
なぜバターが長期冷凍に向いていないのかというと、油が劣化しやすい食材だからです。

油が長期間の冷凍によって劣化する現象のことを酸化といいます。ほとんどの食品は、長期間にわたって酸素に触れると酸化して劣化しますが、油は酸化による劣化が早い食品です。

さらにクロワッサンは何層にも重なっているので、空気に触れる面積が多く、クロワッサン内のバターの油分の酸化と劣化を促してしまいます。
冷凍したクロワッサンは、忘れずに早く食べましょう。

カレーパンは冷凍しないほうがよい

カレーパンは冷凍しないほうがよいパンです。
カレーパンの多くは、パン全体を揚げているので油分たっぷり。しかも具材のカレーも油分がたっぷりですし、肉にも油が含まれます。
油は冷凍庫のなかで酸化による劣化を早めてしまいます。

そしてカレーのなかのニンジンやジャガイモなどの野菜は水分を多く含むので、冷凍して解凍すると水分が水→氷→水と変化して野菜の細胞を傷つけ風味を落とします。
カレーパンは最も冷凍しないほうがよいパンの1つといえるかもしれません。

ではなぜ冷凍専門のカレーパンが存在するのか

「普通のカレーパンを冷凍・解凍した状態」と「冷凍専門につくられたカレーパン」のおいしさに違いがあるのは製法にあります。
冷凍専門につくられたカレーパンは、業務用の急速冷凍装置などを使うことで冷凍焼けを起こしにくくしています。また具材も水分を調整するなどして冷凍と解凍をしても悪影響が出にくくしています。
これは「さすがプロの冷凍食品屋さん」といったところでしょう。

カレーパンは冷凍しないほうがよい

【番外編】サンドイッチは冷凍不向きな代表格

サンドイッチも、冷凍しないほうがよいでしょう。「食パンは冷凍に向いているのに、なぜサンドイッチは冷凍NGなのか」と思われるかもしれませんね。
サンドイッチの具材が冷凍に向いていないのです。

葉も油分も劣化を加速させる

特にレタスなどの葉物野菜が含まれるサンドイッチは、サンドイッチのなかでも特に冷凍に向いていません。
葉物野菜は水分が多く含まれていてこれが悪さをします。水は凍らせて氷にしたり、溶かして水に戻したりすると体積が変わります。水の体積が変わることで、野菜の細胞が圧迫されたり緩められたりして壊れやすくなってしまうのです。細胞が壊れると野菜の鮮度が失われ、おいしさもみずみずしさもなくなってしまいます。

さらに、マヨネーズたっぷりのたまごサラダとかツナマヨなどのサンドイッチは、冷凍することで水分が分離してしまうのでNGです。

まとめ~冷凍に適したパンを学んでパン生活を楽しんで

まとめ~冷凍に適したパンを学んでパン生活を楽しんで

パンが冷凍できてよかった、と思いませんか。おいしいパン屋さんはかなり増えましたが、それでもお気に入りのパン屋さんとなると遠方に出かけなければならない人も多いはずです。
冷凍できるのであれば、お気に入りのパン屋さんでたくさん買って家庭で保存でき、長く楽しむことができます。
冷凍をうまく使って、充実したパン生活を送ってくださいね。