冷凍パンの賞味期限を考える

パンの保存方法

どんな食品でも冷凍にすると常温や冷蔵よりも長持ちするので、パンも冷凍すれば長く保たせられると考える方も多いと思います。
では実際のところ、冷凍パンの賞味期限はどれくらいと考えたら良いのでしょうか
もともと冷凍パンとして販売されているパンと、ご家庭で冷凍したパンという違いはあれど、考察を進めていくと一定の回答にたどりつきました。

その回答とは「2週間程度で消費するのが望ましいのでは?」というものです。この結果にいたった経過を詳しく解説します。

賞味期限とは、消費期限と何が違うのか

賞味期限とは、消費期限と何が違うのか

まずはパンをいったん置いておいて、賞味期限について解説します(*1)。
賞味期限は、おいしさなどの食品の品質が保たれる期間のことです。したがって賞味期限を多少すぎても、品質が落ちているだけで食べることはできます。 この場合の「食べることはできる」とは、賞味期限を多少すぎても、食べても健康を害さないだろうという意味になります。

賞味期限と似た概念に消費期限がありますが、こちらは安全に食べられる期間のことです。つまり、消費期限をすぎた食品を食べると健康を害する恐れがあります。

まとめ:賞味期限と消費期限の違い

●賞味期限:おいしさなどの食品の品質が保たれる期間:多少すぎて食べても害はない

●消費期限:安全に食べられる期間:すぎて食べると健康を害するかもしれない

ここで注意したいのは賞味期限の「多少すぎても食べても害はない」という点です。これは食べても安心であることまでは保証していませんし、おいしさを含めた品質の保証もしていません。

賞味期限はスナック菓子や缶詰などの比較的傷みにくい食品につけられます。 消費期限は食肉や総菜など、速く劣化する食品につけられます。そのため消費期限を過ぎた食品は、食べないが鉄則です。

(*1) 消費期限と賞味期限は、何が違うのでしょうか?【食品安全FAQ】 東京都福祉保健局

冷凍パンは種類によって賞味期限が変わるってホント!?

賞味期限とは、消費期限と何が違うのか

それでは冷凍パンの賞味期限について考えていきましょう。
パンと一言にいっても食パンから甘い菓子パンまで様々な種類がありますが、種類によって冷凍に向くもの、向かないものがあり、またさらに冷凍でおいしさが保てる期間が変わります。
ここでは「冷凍パン」として販売されているパンの代表的な種類として、食パン、バゲット、クロワッサン、ベーグルについてご紹介します。

答えはYES。パンの種類によって期間が異なる

朝食の定番・食パンは、しっかり密封された状態で保存されていれば、冷凍での賞味期限が長いパンの一つ。ただし、スライスされた食パンの場合は、表面積が大きく水分が抜けやすいため、冷凍といえども長持ちはしませんので、小分けにして冷凍用の保存袋で保存するのがコツです。

別名・フランスパンともいわれるバゲットは、パンの中でも足が早いをパンの一つですが、冷凍保存には向いたパンなので、食べきれない分は少しでも早く冷凍保存がオススメです。冷凍での賞味期限も長く、食パン同等に保存が可能です。

バターの香りがたまらないクロワッサンは、バターをたくさん使っているので冷凍してもおいしさが保たれやすいパンです。しかしバターをたくさん使っているからこそ、油分の酸化と劣化が進みやすく、長期の冷凍保存には不向きです。

もっちり食感が特徴のベーグルは、賞味期限が長く、この中では冷凍保存に一番向いているパンです。理由としては、他のパンと比べて密度が高いため水分が逃げにくく、油脂が少ないので酸化もしにくいことから、品質が長期間保たれます。

冷凍パンとして販売されているパンの賞味期限は-18℃が前提

冷凍パンとして販売されているパンの賞味期限は-18℃が前提

冷凍パンは、別の切り口からも分類することができます。

■冷凍パンの大分類

●パンメーカーから「冷凍パン」として冷凍状態で販売しているパン
●常温のパンを家庭の冷蔵庫の冷凍室で凍らせたパン

まずここでは冷凍パンとして販売されているパンの賞味期限を考えてみます。

冷凍食品には裏面の原材料などが書かれているあたりに、保存方法「−18℃以下で保存してください」と記載があります。そのため冷凍食品の賞味期限の設定は、−18℃で保存した場合の期限を示していることになります。
では、ご家庭の冷凍庫の温度は一体何℃なのでしょうか。日本工業規格(JIS)により、冷蔵庫の冷凍室の温度は「-18℃」と定められています。
しかし、扉の開閉や冷凍前の食品を入れたりすることによって、家庭用の冷凍庫の温度は思った以上に上昇してしまいます。
その場合、中に入っている冷凍食品の温度が−18℃に保たれているかというと、そうではありません。庫内の温度変化によって、中の冷凍食品になんらかの影響が及びます。ですので、庫内の温度変化が起こってしまうと、品質や賞味期限も記載の通りというわけにはいかなくなってしまうのです。

ならばどのくらいで食べるべき?

冷凍庫内を−18℃をキープできていない場合、賞味期限を保証出来ないというお話を上で書きましたが、ではどのくらい短いと見積もったらいいのでしょう。

冷凍庫内に温度変化が起きた時、冷凍されている食品の大きさや重さ、密度によってその影響を受けるレベルが変わってきます。大きくて重くて密度の詰まったものであれば、環境温度が少し上がっても、なかなか解凍されたりしないのは、想像がつくでしょう。

では本題のパンはどうでしょう。大きさはともかく、パンは軽く、密度が低いものが多いです。そのため冷凍庫内の温度変化を受けやすく、−18℃の前提が崩れやすいご家庭の冷凍庫では、賞味期限内であってもより早く食べるべき商品の一つと言えます。

つまり冷凍パンとして販売されているパンをおいしく食べるには、賞味期限が残っていても1ヶ月以内に食べることをおすすめします。

常温のパンを家庭で凍らせた場合の賞味期限について

常温のパンを購入し、食べきれなくて冷凍することになったとします。
もしくは、遠方のパン屋さんでたくさん買ったパンを、ご家庭の冷凍庫でストックするために冷凍する場合もあろうかと思います。

次にここでは常温のパンを家庭で凍らせた場合の賞味期限を考えてみます。

家庭用の冷凍庫で保存した場合の賞味期限は設定されていない

当たり前ですが、常温のパンをつくっているパンメーカーは、常温保存を前提としているため、ご家庭で冷凍したときの賞味期限を設定していません。

ただし、一般常識的に、パンを常温で保存するより、冷凍して保存したほうが長くもつはずであると考えられますよね。
普通のパンであれば常温保存での賞味期限が1〜5日くらいなので、購入してすぐに冷凍したパンならそれよりは長持ちするはずです。

実用面から考えても2週間程度がおすすめ

冷凍パンとして販売されているものでも、1ヶ月以内がおすすめなので、ご家庭で冷凍するパンはもう少し早めに食べきるべきです。

ご家庭の冷凍庫で凍らせたパンは、冷凍パンとして販売されているものと比べ、専用の冷凍設備で冷凍されていないという点と、冷凍を前提に考えられたパッケージで密封密閉されていないという点で、品質に大きな違いが生まれます。加えて、ご家庭で冷凍する時点で、焼き上げてからかなりの時間が経っているため、おいしさがすでに損なわれ始めた状態を冷凍することになります。そこで、ご家庭の冷凍庫で凍らせた場合は、2週間程度で食べきることをおすすめします。

まとめ~「必ずこの期間内で」と言い切れませんが

パン粉

冷凍パンの賞味期限について考えてみました。
冷凍パンとして販売されているパンをおいしく食べるには、賞味期限が残っていても1ヶ月以内に食べるのがよく、一方の常温のパンをご家庭で冷凍した場合は、購入してすぐ冷凍すれば2週間くらいならおいしく食べられるといえそうです。

「必ずこの期間です!」と言い切ることは、残念ながら難しいので、冷凍パンであってもお早めにお召し上がりください!!