食べきれないパンの保存の仕方:キーワードは冷凍&小分け

パンの保存方法

おいしいと評判のパン屋さんに行くとつい買いすぎてしまう、ということはよくあると思います。
また、常に家にパンをストックしておきたいというパン愛好者もいるでしょう。
正しい保存の仕方を知っておけばパンに囲まれた生活を送ることができますよ。
そこでこの記事ではパンの保存方法を解説します。
キーワードは、冷凍と小分けです。

パンを冷凍保存するときなぜ小分けするとよいのか

パンを冷凍保存するときなぜ小分けするとよいのか

腕ほどの長さのバケットや抱えるほどのドイツパンは、その大きさがおいしさの秘訣です。
しかし、いざ保存するとなると、その大きさが困りものになります。
パンを冷凍するときのコツと小分けしたほうがよいメリットを解説します。

小分けにしたら1つずつラップしてさらに密封!!

パンを冷凍するときの基本は、1回で食べきれる分量に小分けして、1つずつラップなど包んで密封することです。ラップだけでは密封することはできませんので、ラップで包んだパンは、冷凍可能な保存袋や密封容器に入れて、しっかり密封して保存しましょう。
バケットを丸々1本保存するときは、1回で食べきれるくらいのサイズにカットし、それぞれをラップに包みます。それを保存袋に入れて、しっかり密封してください。ドイツパンなどの大きなパンも同様です。
食パンなどのスライスされたものも、パッケージの袋のまままとめて冷凍しがちですが、面倒でも1枚ずつラップでラップに包みましょう。
イングリッシュマフィンは、割らずに冷凍してしまうと、食べたいときに割れなくなってしまいますので、冷凍する前に2つに割って、コーングリッツが付いている面を背中合わせにして冷凍すると、くっつきにくくて便利です。

小分けにすることで、よりおいしさキープ&便利に

少し面倒でも冷凍前に小分けにして密封したほうが良いのには、理由があります。
それは、
①より早く冷凍できる
②冷凍保存中の品質劣化を抑えられる
③食べる・調理する際に便利だからです。
1つ目の理由については、バケットや食パンなどの大きなパンに特に言えますが、小分けにしておくと、より早く冷凍することができます。より早く冷凍ができるということは、パンの劣化をより早く止めることができ、よりおいしい状態で保存できるということです。
2つ目の理由については、詳しくは後ほど解説しますが、冷凍保存中にも、パンに含まれる水分が蒸発し、またパンが酸化することで、おいしさが次第に損なわれてしまいます。冷凍することで遅らせてはいますが、それではまだ不十分。
小分けにしてラップで空気をある程度遮断することにより、より長くおいしさを保つことができるのです。
3つ目の理由として、小分けしておくことで食べる・調理する際の利便性があります。
食べたい量は2切れ程度なのに、1本まるごと冷凍したバゲットに包丁が入らず、全て解凍したなんて経験はありませんか?
そんなとき、冷凍前にあらかじめ小分けしておけば、食べたい量だけ解凍できて、残りのパンはそのまま冷凍庫でおいしさをキープすることができます。また、サイズが小さいほど早く均一に解凍できるので、時短になるのもメリットの一つ。
ちなみに、一度解凍したパンを再冷凍するのは、品質が大きく劣化しますので、再冷凍は絶対にやめてくださいね!

常温か冷凍かの判断は何日で食べきれるかにかかっている

常温か冷凍かの判断は何日で食べきれるかにかかっている

パンを常温か冷凍かどちらで保存した方がいいのか、という質問の答えは2つあります。

●答えA:常温のほうがよい
●答えB:冷凍のほうがよい

答えAも答えBもどちらも正しいのですが、なぜ2つの答えがあるのでしょうか。

風味を損なわない方法は、やはり常温

もし短時間や1日や2日で食べられるなら、常温で十分です。密閉できる保存袋があればさらによいでしょう。

最近は冷凍庫の冷凍技術とパンの製造技術の双方が向上し、パンづくりの研究も進んでいるので、冷凍してもすごく味が落ちるということはないのですが、それでもやはり常温のほうが風味を損なわないといえます。
ただし、もともと冷凍で売られているパンは必ずしもそうとはいえません。
とはいえ、常温保存は刻一刻と劣化していきますので、1日や2日で食べきれないのであればすぐに冷凍しましょう。

保存とは劣化を遅らせること

冷凍パンとして販売されているパンの賞味期限は-18℃が前提

パンの冷蔵保存と冷凍保存の解説をする前に、保存の本質について解説します。
保存とは何なのかというと、劣化を遅らせることです。

つまり遅らせるだけであって、保存では劣化を止めることではない、ということです。どのように保存しても劣化の進行は止められません。
しかし劣化を遅らせるだけでも十分価値があります。
ある程度の期間保存できれば、好きなタイミングで好きなパンを食べることができるからです。

冷やすことは優れた保存技術である

つまり保存技術とは、1日でも1時間でも1秒でも長く劣化を食い止める工夫といえます。
そして食品で効果が高い保存方法が、冷やすこと、つまり冷蔵と冷凍になります。

短期間でも保存には冷凍をおすすめします

「パンの冷蔵保存」と聞くと、常温保存と冷凍保存の中間をイメージするかもしれません。
つまり「2日程度しかもたない常温保存」と「長期保存が可能な冷凍保存」の間に「ちょっと長めの保存ができる冷蔵」がある、と思っている人は少なくないのではないでしょうか。
この考え方は、パンについては正しいとはいえません。
なぜなら、パンにとっては「ちょっと長め」の保存でも、冷蔵ではなく冷凍してしまったほうがよいからです。

常温と冷蔵はどちらがいい?

冷蔵より冷凍のほうがよい理由を解説する前に、常温と冷蔵はどちらがよいのか紹介します。
パンの場合、腐敗させないという観点においては冷蔵保存のほうがよいです。

微生物が最も活発に動く温度は30度ほどです。室温の25度前後は30度に近いので、常温=室温は微生物にとって快適な状態といえます。
一方、冷蔵庫の温度は2~6度ぐらいなので、微生物にとって不利な環境といえます。また、冷蔵庫のなかはドアを閉めていると外界とシャットアウトとされているので、パンが酸素に触れる機会がグッと減ります。これも微生物に不利な状態をつくるので、腐敗しにくくなるという意味で、パンの保存に有利な状態になります。

ただし、これはおいしさを抜きにして考えた場合のみにいえることです。パンは冷蔵するとおいしさが損なわれてしまいます。
おいしさを保ちながら保存するなら、冷蔵はおすすめしません。

すぐ食べきれないパンは冷凍がベスト

長期保存するなら冷凍のほうが有利であることは直感的に理解できると思います。しかし数日の保存でも、冷蔵するより冷凍してしまったほうがよいのです。

なぜ冷蔵より冷凍したほうがよいのか

冷蔵がNGなのは、パンが硬くなってしまうからです。パンの主成分であるデンプンは冷蔵の温度帯では水分が抜けやすくなり、硬くなる性質があります。
一方、冷凍の温度帯ではデンプンの劣化が進みにくくなるので、水分が保たれ固くなりにくいのです。

水分が抜けて硬くなったパンはパサパサになっておいしくありません。そのためパンは冷蔵保存より冷凍保存のほうが有利なのです。

冷凍保存は「焼け」に注意~長すぎる保存は禁物

パン粉

パンを長期保存するなら冷凍がよいでしょう。
最近の冷蔵庫の冷凍技術はかなり進んでいて、普通のパンを冷凍しても、あまり風味は損なわれません。何もいわれずに、冷凍したパンを解凍して出されたら、それと気づかないかもしれません。

ただその冷凍であっても、「保存とは劣化を遅らせることである」の法則に逆らうことはできません。
長すぎる冷凍保存は、やはりパンを劣化させます。
冷凍による食材の劣化を「冷凍焼け」といいます。

冷凍庫内でも蒸発(乾燥)、酸化が起きている

冷凍庫の最大のメリットは、食品が含む水分の蒸発(乾燥)を抑制することと、酸化を抑制することです。
パンのなかの水分が蒸発するとパンが乾燥し、パンが酸化すると食味が落ちるので、蒸発(乾燥)と酸化の抑制はとても重要です。

家庭用の冷凍庫は、庫内温度が-18℃くらいしかなくドアを頻繁に開け閉めするので、庫内の温度が一定に保たれているわけではありません。
一方で業務用の冷凍庫は、庫内の温度が安定しているため、品質が長く保たれます。例えば、水産業者がマグロを保存している冷凍庫は-50℃くらいで、しかもドアが何重もあって酸素の侵入を防いでいます。
それと比べると家庭用冷凍庫は冷凍焼けしやすい状態にあるわけです。

なので、冷凍した場合も酸化や劣化は起こるので、なるべく早めに食べていただくことがおいしく食べる秘訣といえます。

まとめ~常温、冷凍、小分けを賢く使いわけて

パン粉

パンを保存して、なおかつおいしく食べるコツは次のとおりです。

①常温保存でおいしいうちに食べきる
②食べられないときは早めに冷凍保存
③冷凍保存するときは小分けにする
④冷蔵はおいしさのためにはNG

常温、冷凍、小分けを賢く使いわけて快適なパン生活を送ってください。