こんがり焼けたトーストにバターをぬって、大きな口でかぶりつく。シンプルですが、おいしいですよね。
そのおいしいトーストを生み出すオーブントースターは、食パンのおいしさを倍増させる装置といっても過言ではないのでしょうか。
そのトースターが最近大きく進化しています。
少し昔は、トースターは最も安い家電の1つで、数千円も出せば買えました。
ところが最近は1台数万円するトースターが登場したのです。
そしてパンの焼き方もトースターによってかなり違っていて、水でパンを焼くものまであります。
それぞれのトースターにどのような特徴があるのか解説します。
トースターの基本は電熱線を熱源とするトースターでしょう。安いものだと2,000円くらいで買うことができます。これでも食パンをしっかりこんがり焼くことができます。
トースターが開発される前は、もちろん直火で焼くことが主流でした。
直火で上手に焼ければおいしいのですが、焦げてしまったり、焼けていなかったり失敗することも多く、扱いにテクニックが必要でした。
誰でも簡単に安定しておいしく焼ける方法としてトースターが開発されました。
電熱線を熱源とするトースターは赤外線を使って食パンを焼いています。
トースターのなかには小さくて細い蛍光灯のようなものがありますが、これは電熱線をガラスで覆ったものでガラス管ヒーターといい、電気を通すと発熱して赤外線を発します。
赤外線は熱を放射するので、食パン全体に熱を通すことができます。
格安のトースターが存在するのは、ヒーターに電気を通して赤外線を発して焼くだけだからです。構造がシンプルなので開発コストも製造コストもかからず安いわけです。
しかし値段が高いトースターもあり、これは「焼く賢さ」が違います。
構造がシンプルなトースターの場合、温度が調節できないので、焼き加減は焼く時間を短くしたり長くしたりして調整するしかありません。
一方値段が高く賢いトースターは、ヒーターの温度を調整することが可能で低温でじっくり焼くことも、高温でサッと焼くこともできます。
また、トースター内にセンサーが設置されたトースターになると、庫内の温度自体を調節してくれます。
ただこのように高性能化するには、トースターにコンピュータを搭載する必要がありコストがかかります。
それで焼き方が賢くなるほど、性能が高くなるほどトースターの値段が上がってしまうわけです。
数万円もするトースターのなかには、熱源にグラファイトを使っているものがあります。
グラファイトは熱伝導率が非常に高く、0.2秒で食パンを焼くのに十分な温度に達する製品もあります。
グラファイトは炭素原子の結晶で、基本的な構造はダイヤモンドや石炭と同じです。 炭素を高温で処理すると不純物が燃えて消えてしまうので、炭素原子が規則的に並び、高温に耐えることができるグラファイトになります。
高温に耐えられるということは、高温をかけても壊れないことを意味します。
そのためグラファイトをトースターに使えば、グラファイトの温度を一気に高めることができます。
そしてグラファイトは、温度を一気に高めながらその熱を広げていくこともできるので、トースター内が全体的に高温になります。
それで食パンのように面積がある物体でも全体を焼くことができるわけです。
グラファイトを使ったトースターでパンを焼くと、まるで高級レストランで出されるパンのように、表面はカリっとしているのになかは弾力を持ちながらふっくらした仕上がりになります。
このような仕上がりになるのは、高温短時間で食パンの表面全体を焼いてしまうからです。
グラファイトを使ったトースターが優れているのは、スーパーやコンビニで売っている普通の食パンでも「表面カリっ」「なかふっくら」を実現する点です。
高くても毎日のパンがおいしく楽しめるなら、ということで数万円でも売れるのでしょう。
何十年も前に流行したのが、ポップアップ型のトースターです。
食パンを縦位置でトースターのなかに入れてレバーを落とすと、食パンがトースターのなかに隠れます。
トースターのなかには電熱線などの熱源がセットされているので、食パンが焼かれます。
そして一定時間がすぎるとバネでなかの食パンがポンッと上がってきます(ポップアップしてきます)。
トースターは食パン以外も焼ける形になっているのですが、ポップアップ型トースターは食パンしか焼けないことが要因なのか、いつの間にか廃れてしまいました。
しかし、ポップアップ型トースターがレトロでオシャレということで、最近また復活してきています。
水で食パンを焼くトースターもあります。
水で焼くと食材にほどよく水分を与えることができるので、例えば、多少乾燥してしまった食パンでもしっとりさを取り戻すことができます。
水はどれだけ熱を加えても100度にしかなりません。そして100度に達した水は沸騰して蒸発してしまいます。これは水が気体になった状態であり、これを気化といいます。
水は蒸発してしまうので100度以上にすることはできませんが、気化した水蒸気はさらに加熱することができます。
水で焼くトースターは、水蒸気を最大330度まで熱し、それを食パンに吹きつけるので焼けるわけです。
この方法なら食パンだけでなく、魚や肉も水で焼くことができます。
「水で焼く」「330度の水蒸気を吹きつける」と聞くと、食パンが濡れてベシャベシャになってしまうと想像するかもしれませんが、そうはなりません。
水で焼くトースターで食パンを焼いても、「表面カリっ」「なかふっくら」になります。
水蒸気を食パンに吹きつけてもベシャベシャにならないのは、330度にもなっているからです。食パンの表面に付着している水分は、330度の水蒸気に触れると蒸発してしまいます。
また330度の水蒸気は過熱水蒸気という特殊な状態になっていて、これを吹きつけても濡れることはありません。
トースターではありませんが、パンを焼くといったら、ホットサンドメーカーも選択肢にあがってくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。 ホットサンドメーカーを使うと調理バリエーションが一気に広がります。
ホットサンドメーカーには手動式と機械式があります。
まず手動式のホットサンドメーカーですが、これは金属を熱してそれを食パンに押し当てるだけの構造です。
手動式ホットサンドメーカーは、2枚の金属板でできていて、それで食パンを挟み、金属板に直火を当てて焼きます。
直火を使っていますが金属板が熱を広げるので、食パンの表面を全体的に焼くことができます。
しかも2枚の金属板は、食パン全体を覆う形になっているので、2枚の食パンのなかに具材をはさめばそのまま焼くことができます。なかの具材もしっかり火が通ります。これでホットサンドのできあがり。
手動式ホットサンドメーカーは直火に当てなければならず、取り扱いが難しいでしょう。
機械式ホットサンドメーカーなら、電気の力で熱をおこすので簡単です。
機械式ホットサンドメーカーは、金属板の上に電熱線が配線されています。電気で電熱線を温めて、それで金属板を熱して食パンを焼きます。したがって基本構造は手動式と同じです。
機械式ホットサンドメーカーのなかには、ワッフルやドーナツをつくれるものもあり、より様々なバリエーションが楽しめるのではないでしょうか。
食パンはとても優れた食べ物で、そのまま食べてもふわふわした食感が楽しめて小麦の味がしておいしいのに、トーストすると、また別の表情をみせてくれます。そのお手伝いをするのが、数々のトースターです。 用途も値段もさまざまなので買うときに迷ってしまうと思いますが、それぞれ得意分野が異なるので、自分の「パン生活」にマッチしたものを探してみてください。